磨く・保護する を考えてみる
とあるオーディオ誌の付録が研磨と汚れの再付着を誘発するとの話題が
一部のネット関連で話題となっている
クリーニングの話を前回したが、あらためてなぜオーディオにおいて研磨と
オイルが使われたのかを考えてみる
オーディオでオイルの使用はいつ頃が起源となったのはわからないのだが、
現在主流とされるオーディオオイルに関してはおおよその見当はついている
私の知る限り一番古いのが、コンタクト・エンハンサー 「 TWEEK 」 なるもの
接点に一滴垂らすだけで抜群の導電効果が得られるとしてロングセラー商品であった

初期のころ輸入代理店は 『 液体金属 』とのフレーズで売り出していたが
実際どのようなもので、それがフレーズ通りの液体金属なのかは不明である
コンタクト・エンハンサー・・・ 昔、家庭用ビデオで機器をつないでダビングすると
画像劣化は必至であった
劣化を最小限にとどめるため、あらかじめ劣化損失を見越して映像信号を強調して
送り出すイメージエンハンサーという機器が発売されていた
エンハンスという言語はこのときからビデオ愛好家に知れ渡ることになるのだが、
コンタクトエンハンサーは販売して間もない頃の、時代を象徴するような名称である
それからしばらくした'90年代半ばに自動車オイルやケミカル用品で有名だった
和光テクニカルからチタンオーディオオイル Ti-102が発売された
以降はクリプトンからナノメーター級のカーボンダイヤが混入されているという、
「 SETTEN No.1 」 が発売され爆発的人気を得る
それからはカーボンダイヤを筆頭に 金、銀、銅といった導電物質が混入されるリキッドが
順次発売され、他メーカーからも類似したオイルが次々と発売されることとなり
以後、接点へのオイル添付はオーディオ市民権を得ることとなった

中には導電物質が含有されていないオイルだけのものもあり、それらの効果は
含有する物質によって変化を見せる
基本的な解釈として、オイルが空気を遮断することでの導体の酸化防止と
オイルの中に含まれる導電物質が接点の隙間を埋め通電状態を改善するというものである
もっとも、オイルの中に導体金属の隙間を埋めるほどの物質が入っているとは考えにくく、
添加物質が容器の中で沈殿する特性であれば、重力にしたがって隙間を埋めるとされる物質も
下降するものであるから、少量といえども効果は経年と共に変化することは避けられない
それでも聴感上の変化が認められていることもあり、根強い人気があるアクセサリーである
オーディオにおけるオイルの評価はここで決まったようだ
恐らくこのあたりから、オーディオのオイル信仰が始まったのだろう
では次は研磨である
接点のクリーニングから派生したものであるのだが、本来初期性能を維持する目的のはずの
クリーニング行為がいつの間にか音質を上げるための行為にすりかわっていることに注目したい
接点のクリーニングにおいては評論家の福田雅光氏が根強く推奨してきたこともあって
今ではすっかりあたり前の行為となった
考え方としては通電するところに汚れがあれば電気の通りが悪くなる そうすると
音楽信号を電気として通すオーディオにおいては情報量が目減りする ということだろう
これは酸化したスピーカーケーブルの導体を新しくすることで音質を改善するといった一連の
流れに属するものだ
ところがこの汚れを取るというのがどこでエスカレートしたのだろう 通電部分の金属面への
積極的なアプローチに変貌した
汚れを 『 落とす 』 では無く、 『 削る 』 にである
文字の上では研磨・・・ 『 磨く 』 となるのだが、その作用は
『 削る 』 といってもいいものだ
恐らくそれらはインターコネクトケーブルの端子からがスタートではなく、
電源アクセサリー関連から派生してきたものだと考えられる
と、いうのも、電源における汚れのうちアルコール等で取れないものというのは
抜き差しなど摩擦ではがれた接点金属が突入電流で焼きついてできたものだからである
これらはアルコール付き綿棒でこすったくらいではなかなか取れない
よってその汚れを取るには、根こそぎ削り落とす 『 研磨 』 となったのである
電源ケーブルでも音質が変わることに認めはじめたオーディオ界であったが、音質の
変化量はことのほか大きかったようで、その変化のうちマイナス要因の多くが
電源供給源の接点の汚れが原因であることに気が付き始めた
しかし、ピンケーブルなどの汚れと違い 『 焼き付き 』 であるから、その駆除には
これまでのケミカル用品では間に合わないこともあったようで、当時は今では考えられないが
キッチン用品のクレンザーで電源ブレードを磨くといった方法が紹介されていた
恐らくこれが初期の削るクリーニング方法であっただろう
もちろんピカールで磨く方法も紹介されていたが、当時からクリーニングの重要性を説いていた、
福田氏はオーディオ用のクリーニングアクセサリーのテストを行った結果、たとえ
オーディオ用と謳われていても接点に残留物が残るクリーナーは音が悪くなるとの
見解を示し、以後クリーナ自身の残留物が残らないスリーボンド社のパンドー29Dを
広く奨めることとなる
ちなみにこのパンドー29Dは内容量が多く安価なので他メーカーのクリーナーが
売れなくなる恐れがあると福田氏が誌面で語っていた
ある意味これがクリーナーとして適正価格であって、オーディオ用と謳われているものが、
巷で言うところのボッタクリ価格というのだろう
それから研磨であるが、ケーブル導体を研磨したとする商品があった
導体表面を鏡面仕上げにしたと説明している
音の効果は定かではないが、考え方としては信号の高域情報は導体の表面近くを
流れるという表皮効果の仮説に基づいてだと思われる
表面がなめらかであれば表皮効果にかかわる帯域の信号の通りもスムースになって結果、
音質が向上する、といったところであろう
だがこの研磨なるものがケーブルを生産する工場においての いち工程なのか、
工場から納品した導体を手作業で磨いたものなのかは不明である
また鏡面仕上げも薬品による化学処理なのか、研磨剤を使っての物理処理なのかも
不明である
ただ・・・磨がけば音が良くなるというある種 盲目的な思い込みから、
とにかく磨けばいい、研磨剤を使ってでも鏡面にすればいいとの歪曲した解釈が
透けて見えたりもする
ケーブル導体にも及んだところで、オーディオの研磨行為がひとつのセールスポイントに
なっていることを示す一例であるといえよう
私の知っている範囲での解説だが、こういう流れで現在に至っていると考えられる
振り返ればオーディオにおけるオイル塗布も研磨クリーニングも全く別のムーブで
あることが理解していただけると思う
工程としては端子のクリーニングののち保護オイルを塗布することになるのだが、
各々が個別の作業であり片側が半端のままで工程を進めれば芳しくない結果が
音質として露(あらわ)になることがわかるというもの
特殊ウエスでボディの汚れを落としてツヤを出す 『 フクピカ 』 のような効果を
期待するのは理解できなくもないが、それをオーディオで謳うのは、
オーディオを甘く見ているといっても決して過言ではないと思う
2時間以上かけて洗車している身としては、拭くだけと謳われているお手軽な商品の使用上の
落とし穴も知っているからこそ、時間をかけてでも正攻法の洗車を頑なに行うものなのだよ
このような接点に関連するケアはこの20年で形成されたものだし、それを推奨していた
雑誌ではあったが、当初こそ錆びたスピーカーケーブルの導体部分をサンドペーパーで
磨いてピカピカにしても音は芳しくないから新たにむきなおすというのを推奨していたのだが、
誌面広告を買うスポンサーの製品がそんなオーディオのタブーを無視したような製品を
1社だけでなく多社がリリースしてきた以上、どうしても否定できなくなり容認したことから
おかしくなってしまったのかもしれない
それこそ昔は「行間を読め」ではないが、広告主の手前上おおっぴらに否定的な内容の
評論は書けなくとも、前後の文脈から真意を窺い知れる部分を読み取る楽しみの
ようなものもあったのだが、最近ではもはやそんな気概を持つセンセー様は見ることも
無くなり、現行品のときはさんざん持ち上げておいて、ディスコン商品になった途端に
露骨にくさす記述をしたりする
現行品の時に思ったことを言えなかった鬱憤なのかもしれないが、以前のヨイショ文に
感銘を受けて購入した人だっていただろう
オーディオの「販売促進者」ではなく、良いも悪いも言えてこその「オーディオ評論家」だと
思うのだが、今の時代 そういう考えは超理想論なのだろうか
上記に記した評論家諸氏も、今ではどういう価値基準に変貌しているのだろう
実際どのようなもので、それがフレーズ通りの液体金属なのかは不明である
コンタクト・エンハンサー・・・ 昔、家庭用ビデオで機器をつないでダビングすると
画像劣化は必至であった
劣化を最小限にとどめるため、あらかじめ劣化損失を見越して映像信号を強調して
送り出すイメージエンハンサーという機器が発売されていた
エンハンスという言語はこのときからビデオ愛好家に知れ渡ることになるのだが、
コンタクトエンハンサーは販売して間もない頃の、時代を象徴するような名称である
それからしばらくした'90年代半ばに自動車オイルやケミカル用品で有名だった
和光テクニカルからチタンオーディオオイル Ti-102が発売された
以降はクリプトンからナノメーター級のカーボンダイヤが混入されているという、
「 SETTEN No.1 」 が発売され爆発的人気を得る
それからはカーボンダイヤを筆頭に 金、銀、銅といった導電物質が混入されるリキッドが
順次発売され、他メーカーからも類似したオイルが次々と発売されることとなり
以後、接点へのオイル添付はオーディオ市民権を得ることとなった

中には導電物質が含有されていないオイルだけのものもあり、それらの効果は
含有する物質によって変化を見せる
基本的な解釈として、オイルが空気を遮断することでの導体の酸化防止と
オイルの中に含まれる導電物質が接点の隙間を埋め通電状態を改善するというものである
もっとも、オイルの中に導体金属の隙間を埋めるほどの物質が入っているとは考えにくく、
添加物質が容器の中で沈殿する特性であれば、重力にしたがって隙間を埋めるとされる物質も
下降するものであるから、少量といえども効果は経年と共に変化することは避けられない
それでも聴感上の変化が認められていることもあり、根強い人気があるアクセサリーである
オーディオにおけるオイルの評価はここで決まったようだ
恐らくこのあたりから、オーディオのオイル信仰が始まったのだろう
では次は研磨である
接点のクリーニングから派生したものであるのだが、本来初期性能を維持する目的のはずの
クリーニング行為がいつの間にか音質を上げるための行為にすりかわっていることに注目したい
接点のクリーニングにおいては評論家の福田雅光氏が根強く推奨してきたこともあって
今ではすっかりあたり前の行為となった
考え方としては通電するところに汚れがあれば電気の通りが悪くなる そうすると
音楽信号を電気として通すオーディオにおいては情報量が目減りする ということだろう
これは酸化したスピーカーケーブルの導体を新しくすることで音質を改善するといった一連の
流れに属するものだ
ところがこの汚れを取るというのがどこでエスカレートしたのだろう 通電部分の金属面への
積極的なアプローチに変貌した
汚れを 『 落とす 』 では無く、 『 削る 』 にである
文字の上では研磨・・・ 『 磨く 』 となるのだが、その作用は
『 削る 』 といってもいいものだ
恐らくそれらはインターコネクトケーブルの端子からがスタートではなく、
電源アクセサリー関連から派生してきたものだと考えられる
と、いうのも、電源における汚れのうちアルコール等で取れないものというのは
抜き差しなど摩擦ではがれた接点金属が突入電流で焼きついてできたものだからである
これらはアルコール付き綿棒でこすったくらいではなかなか取れない
よってその汚れを取るには、根こそぎ削り落とす 『 研磨 』 となったのである
電源ケーブルでも音質が変わることに認めはじめたオーディオ界であったが、音質の
変化量はことのほか大きかったようで、その変化のうちマイナス要因の多くが
電源供給源の接点の汚れが原因であることに気が付き始めた
しかし、ピンケーブルなどの汚れと違い 『 焼き付き 』 であるから、その駆除には
これまでのケミカル用品では間に合わないこともあったようで、当時は今では考えられないが
キッチン用品のクレンザーで電源ブレードを磨くといった方法が紹介されていた
恐らくこれが初期の削るクリーニング方法であっただろう
もちろんピカールで磨く方法も紹介されていたが、当時からクリーニングの重要性を説いていた、
福田氏はオーディオ用のクリーニングアクセサリーのテストを行った結果、たとえ
オーディオ用と謳われていても接点に残留物が残るクリーナーは音が悪くなるとの
見解を示し、以後クリーナ自身の残留物が残らないスリーボンド社のパンドー29Dを
広く奨めることとなる
ちなみにこのパンドー29Dは内容量が多く安価なので他メーカーのクリーナーが
売れなくなる恐れがあると福田氏が誌面で語っていた
ある意味これがクリーナーとして適正価格であって、オーディオ用と謳われているものが、
巷で言うところのボッタクリ価格というのだろう
それから研磨であるが、ケーブル導体を研磨したとする商品があった
導体表面を鏡面仕上げにしたと説明している
音の効果は定かではないが、考え方としては信号の高域情報は導体の表面近くを
流れるという表皮効果の仮説に基づいてだと思われる
表面がなめらかであれば表皮効果にかかわる帯域の信号の通りもスムースになって結果、
音質が向上する、といったところであろう
だがこの研磨なるものがケーブルを生産する工場においての いち工程なのか、
工場から納品した導体を手作業で磨いたものなのかは不明である
また鏡面仕上げも薬品による化学処理なのか、研磨剤を使っての物理処理なのかも
不明である
ただ・・・磨がけば音が良くなるというある種 盲目的な思い込みから、
とにかく磨けばいい、研磨剤を使ってでも鏡面にすればいいとの歪曲した解釈が
透けて見えたりもする
ケーブル導体にも及んだところで、オーディオの研磨行為がひとつのセールスポイントに
なっていることを示す一例であるといえよう
私の知っている範囲での解説だが、こういう流れで現在に至っていると考えられる
振り返ればオーディオにおけるオイル塗布も研磨クリーニングも全く別のムーブで
あることが理解していただけると思う
工程としては端子のクリーニングののち保護オイルを塗布することになるのだが、
各々が個別の作業であり片側が半端のままで工程を進めれば芳しくない結果が
音質として露(あらわ)になることがわかるというもの
特殊ウエスでボディの汚れを落としてツヤを出す 『 フクピカ 』 のような効果を
期待するのは理解できなくもないが、それをオーディオで謳うのは、
オーディオを甘く見ているといっても決して過言ではないと思う
2時間以上かけて洗車している身としては、拭くだけと謳われているお手軽な商品の使用上の
落とし穴も知っているからこそ、時間をかけてでも正攻法の洗車を頑なに行うものなのだよ
このような接点に関連するケアはこの20年で形成されたものだし、それを推奨していた
雑誌ではあったが、当初こそ錆びたスピーカーケーブルの導体部分をサンドペーパーで
磨いてピカピカにしても音は芳しくないから新たにむきなおすというのを推奨していたのだが、
誌面広告を買うスポンサーの製品がそんなオーディオのタブーを無視したような製品を
1社だけでなく多社がリリースしてきた以上、どうしても否定できなくなり容認したことから
おかしくなってしまったのかもしれない
それこそ昔は「行間を読め」ではないが、広告主の手前上おおっぴらに否定的な内容の
評論は書けなくとも、前後の文脈から真意を窺い知れる部分を読み取る楽しみの
ようなものもあったのだが、最近ではもはやそんな気概を持つセンセー様は見ることも
無くなり、現行品のときはさんざん持ち上げておいて、ディスコン商品になった途端に
露骨にくさす記述をしたりする
現行品の時に思ったことを言えなかった鬱憤なのかもしれないが、以前のヨイショ文に
感銘を受けて購入した人だっていただろう
オーディオの「販売促進者」ではなく、良いも悪いも言えてこその「オーディオ評論家」だと
思うのだが、今の時代 そういう考えは超理想論なのだろうか
上記に記した評論家諸氏も、今ではどういう価値基準に変貌しているのだろう
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